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オメガ Cal.321 スピードマスター






今現在ヴィンテージスタイルを最も徹底している時計はおそらくこれだろう。新作のステンレス製でCal.321を搭載したスピードマスター通称「エド・ホワイト」は、ヴィンテージスタイルの夜光塗料を使っているだけでなく、ブレスレット、ケースなど他の要素もヴィンテージのスピードマスターからそのまま抽出されている。もちろん、1968年に生産停止となったCal.321も復活させていることは言うに及ばない。

 さらにヴィンテージスタイルの夜光塗料は、経年変化を経たトリチウムあるいはラジウムよりも物理的に堅牢だ。オメガの腕時計塗料がダイヤルや針から剥がれ、ダイヤルの下に細かなクズとなって漂うのを見るのは不愉快なものだが、フォティーナを受け入れればこれを避けられる。

 フォティーナの短所もまた複雑なものではない。一部の人々にとって単なる偽物のように感じられる、ということだ。当初私も確かにそう感じたが、致命的なまでに偽物のように思えてしまうことがある。自分のものでない借り物の栄光で新品の時計を着飾ろうとする厚かましい試みのように感じられるのだ。意図的に古びた様子を出した素材の使用は、時計の世界では比較的新しいことだ。ヴィンテージウォッチ、特に経年変化が明らかに見えるダイヤルと針を備えた腕時計の収集が真の文化的現象になる前は、単純にこのようなテイストのものが存在していなかったから、たいへん不自然なものと取られかねない。
 最も人気のある実用時計にとって、色あせたトリチウムはその真正性と果たすべき機能への献身の証である。フォティーナを使えば最悪の場合、本物の計器としての時計ではなく、絵に描いた時計を腕に着けているような心地にさえなるだろう。

 ヴィンテージスタイルの夜光塗料の一般的な呼び名であるフォティーナが本来的に蔑称であるという事実によっても状況は変わらない。これを「ヴィンテージスタイル夜光塗料と針」と呼び変えればその性質をより自然に表すことができ、僭称しようという試みではなくデザイン上の判断という方に印象を寄せられる。しかし残念ながらこれではキャッチーさを欠くため、塗料そのものと同様、フォティーナという呼び名も変わることはないのだろう。